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矢田石材店は愛知県岡崎市、東名高速岡崎インターチェンジのすぐ近くにあります。店舗と体験工場はクルマで数分の距離にありますが、きょうは体験工場に直接おうかがいしました。矢田石材店の若き代表、矢田敏起(やたとしき)さんが笑顔で迎えてくださいました。 事務所では女性社員の方がパソコンに向かってお仕事を。何かデザインされています。
―こんにちは。何をなさっているんですか? お墓をデザインしています。 ―そうでしたそうでした(汗)。ここはお墓屋さんですものね。
「お墓体験工場」の見学に先立って、矢田さんから体験工場設立の経緯などについて、お話をうかがいました。 ―お墓とは何か、お墓とどう向き合うべきか、矢田さんの基本的なお考えをお聞かせください。 お墓とは故人そのものである
お墓というのは、ぼくらが加工したり工事したりしているときはただの石なんです。石を切って磨いて積んだだけのものです。ところがお墓を祀る人がお参りすることによって、お墓はただの石からお参りする人の母親となり父親となる。つまり故人という存在そのものに変わるわけですね。―確かにそうですね。お墓に向かうと、亡くなった方がそこにいるような気持ちで手を合わせますね。 お施主様にとって、先立たれた身内そのものである尊いお墓は、そう簡単に壊れたり倒れたりしてはいけないと思うんですよ。お墓はできるだけ頑丈で、長期間にわたって美しい状態が保たれなければならない。だからぼくらは、少しでも頑丈で経年変化に強いお墓を作ろうと毎日一所懸命汗水を流し、少しでもよい施工方法はないかと日々試行錯誤を繰り返しながら、夢中で働いているわけです。 いいお墓とは何か、誰も知らない ところが困ったことに、建っている姿を外から見ただけではお墓の品質はわからない。だからお墓は値段が高いほうが多分いいだろうということになりがちです。 そのうえお墓づくりは手を抜こうとすれば簡単にできてしまう。石の産地偽造は横行しているし、耐震性を全く考慮せずに、石と石をモルタルで着けてそれで終わりという安直なお墓づくりが今だに行われていて、しかも外見からでは見分けが付かないのです。 最高水準のお墓づくりを知って欲しい ですからぼくは、まずこの体験工場を見ていただくことで、お墓はつくり方や構造によって強度が全く違ってくるということを知ってもらいたかったのです。 ―矢田石材店のつくるお墓は、どれも矢田さんが一番いいと考える工法で建てられているのですね。 そうです。実は少し前まで価格によって施工方法を3段階に変えていましたが、それも止めました。自分たちがベストだと考えている以外の方法でお墓を建てることに、ぼくらが耐えられなくなったんですね。 ―矢田さんのおつくりになるお墓は、日本で一番頑丈なお墓ですか。 そう確信しています。同じ値段でぼくらよりよい工事をやっている人がいたら逆に知りたいですね。是非とも勉強したいから。 ―よくわかりました。それでは「お墓体験工場」を見せていただくことにしましょう。
![]() ―すごい。いろいろ並んでいますね。最初は何から? まずお墓の構造を説明します。 お墓の断面図
これは施工状態がわかるように墓石を切断して断面が見えるようにしたものです。お墓によって差はありますが、お墓は基本的に基礎のすぐ上に置く「芝台(しばだい)」「四ツ石(よついし)」「中台(なかだい)」「上台(うわだい)」と積み上げられて、一番上に銘が彫られる「竿石(さおいし)」が置かれるという構造になっています。このお墓では、竿石と上台の間に装飾的な「スリン台」が一段追加されています。 中台と上台、スリン台、竿石は、それぞれ中央に石のかみ合わせを入れて剛性を高めてあります(拡大図はこちら)。 大切なのは基礎の頑健さ
お墓の強度にとって大切なのは基礎工事ですね。矢田石材店では30センチから50センチの穴を掘って、鉄筋コンクリート構造の強固な基礎をつくります。(拡大図はこちら)。
一番下にある芝台は4枚の石板を組み合わせて作ることが多いのですが、ぼくらは一枚物の石を使っています。どんなに強い地震に襲われてもこれなら決してバラバラになる心配はありませんから。 ―随分コストが違うんでしょうね。 石自体の価格はそう大きく変わりませんが、施工は大変です。芝台を一枚石にすると200キロ以上の重量になりますが、重機が入れない墓地が多くて人力で石を搬入しなければならないこともよくあります。5000年前のピラミッド造りと同じような苦労をしているわけです。 お墓全体が免震構造に
ここを見てください。芝台は基礎とがっちり固定せずに免震ゲルを介しています。これでお墓全体が免震構造になるわけです。最近の高層建築と同じですね。また芝台は、基礎から伸びている鉄筋と柔構造が保てる弾性のある接着剤で固定しています(芝台を固定する鉄筋はわかりやすいように貫通させてありますが、実際のお墓では見えません。拡大図はこちら)。
四ツ石はコーナー金具で強固に接合する
お墓は納骨するために中が空洞になっています。お骨を収めて大地へと導く縦穴がカロートで、カロートを取り巻いて4つの石が組まれています。これの部分が四ツ石です。四ツ石はそれぞれの石に凹凸を付けてかみ合わせ構造にすることで、設置強度を上げています。(拡大図はこちら)。
四ツ石や外柵など、石を組み合わせるときにはコーナー金具を取り付けますが、ぼくらは丸穴型のものを上下2つ取り付けます。技術力のない石材店が使うコーナー金具はボルトが通るのが丸穴ではなくてスリット状のものです。 ―石に加工誤差があっても取り付けられるようにですね。
ええ、でも強度は低いですね。ちょっとした地震でもボルトがずれて石組みが歪む可能性があります。金具は丸穴型のものを使ったほうが格段に頑丈なお墓になります。確かな加工技術があるのなら丸穴型の金具を使わない理由はありません。
このようにここで建てているお墓は、お墓自体の剛性を高めた上で、免震構造にして地震の衝撃波を逃がす工夫をしているわけです。
![]() ―これは? ゲル、接着剤、粘着剤のサンプルです。1つのお墓でも、これだけのケミカルを使い分けています。いちばん左側が免震ゲルです。基礎と芝台の間や竿石の下にも入っています。
その右のものがエポキシ・ウレタン系の接着剤です。2液混合型の接着剤があるでしょう? あれはエポキシ系といって非常に強力な接着剤ですが、エポキシ・ウレタン系接着剤は、全体としては弾性を保ちながら、石との接合部分の接着強度がエポキシ強度になるという最新のケミカル・テクノロジーの産物です。お墓の耐震性を向上させるために、この接着剤は大きな役割を果たしています。
―いくら引っ張っても千切れないしはがれない。不思議ですね。 そうでしょう。変性シリコン系も弾性がありますが、表面に艶があって24時間ほどで硬化するので、人目につく外装部分の接着に使います。色もいろいろあるんですよ。 エポキシ系の接着剤は、複数の石を組み合わせて強固に接着する場合、例えば下駄と墓誌の接着に使いますね。 最後のこれはブチルゴム。これは接着剤ではなくで粘着剤です。時間が経っても固まりません。 ―粘着剤なんてお墓のどこに使うんですか?
お花立て、線香立て、水鉢を小物といいます。線香立ては納骨する際に動かしますから接着しませんが、矢田石材店では他の小物も剥がせるようにブチルゴムで粘着しています。接着してしまうと掃除や手入れがしにくし、ただ置いてあるだけだと弱い。それでこういう施工をしてます。ほら、とれるでしょう。
―本当だ。丁寧な配慮があちこちにされているんですね。 お墓をいつまでも美しく保つために
次は石の経年変化を防ぐための工夫です。
―石が水に浸かっているだけのような。 よく見てください。この2本は同じように1年以上下側を水に浸しているのですが、石の色が違うでしょう。左側の黒ずんでいるものは天然の石を研磨しただけのもの、右側の石はさらに水を吸いにくいように表面加工を施したものです。 研磨してありますからツルツルしていますが、石は多孔質なんです。表面一面に開いている細穴から水や空気が出入りしている、つまり呼吸しているわけです。この穴をワックスなどで完全に塞いでしまうと、中の空気や水部が出られなくって石の表面に曇りやシミが生じてしまいます。だからそういった加工はすべきではないのですが、しかし細穴からは水とともに汚れなども入りますから、あまり外部から水分は入って欲しくない。 そこでぼくらは細い穴の入り口部分にだけ撥水処理をして、石の呼吸を活かしながら水が浸透しにくい表面加工をしています。 ―そんな加工ができるんですか。 もちろんです。もともと矢田石材店は、石屋さんに石を卸す石材加工の専門業者だったのです。今も自社工場内で石材加工を行い続けていますから、経験に裏付けられた石材加工技術とノウハウもあるのです。
―これは?これは雨など上からの水に対する吸水性を見る実験です。これは一見すると表面研磨した一枚の石にみえるでしょう。 ―たしかに。 ところがですね。こうして水を吹きかけると・・・。 ―あー、左側だけ水を吸って黒くなった。ということは右側には吸水しにくい表面加工がしてあるんですね。 そうです。表面の仕上げを変えることによって汚れ方が変わってくるんですね。ぼくらはお墓が汚れてムラになるのがいやですし、お施主様も汚れないほうがいいといわれるので、こういう加工をしています。
![]() このようして建てられた矢田石材店のお墓は、阪神淡路大震災と同じ900ガルという地震波を発生させた耐震実験にかけても、倒壊することなく無事でした。まだ半信半疑ですか。矢田石材店の「お墓体験工場」では、耐震実験を実演することができるのです。 ―なんと。ここで地震実験ができるんですか。 無理をいって起震装置をお墓用に作ってもらいました。震度6まで再現できます。やってみましょうか。 ―もちろんお願いします。 もしものことがあると危険なので、ヘルメットを被ってください。 ―はい。 じゃあ行きますよ。 ―すごい! 震度6でも倒れそうな気配すらない(驚)。 そうでしょう。これくらいの揺れでは絶対倒れません。本当は震度7まで出せるようにしたかったんですね。それでも倒れることはありませんから。
石屋は昔から墓守(はかもり)だといわれることがあります。建てて終わりじゃなくて、お施主様と共にお墓をお守りしていく。だからぼくらが建てるお墓にはすべて10年間の保証を付けていて、毎年1回、メンテナンスとクリーニングを無料で行っています。―お墓は年々増えていくわけですから大変でしょう。 お墓のメンテナンスは、弟子たちの修行の場という意味もあるんですね。お墓のイロハを学ぶためには数多くのお墓を掃除して、お施主様がお墓をどれだけ大事にされているか理解することが大切です。お施主様と同じ気持ちが持てなければ本当のお墓職人とはいえません。ですからお墓掃除には、職人としての精神面を鍛えるという意味もあるのです。 ―お墓づくりについては、いつ意識し始めるべきですか。 お墓は、必要になったときに残された人が建てるものでしょう。何かのチャンスがあれば墓地は手に入れておいたほうがいい。ただ、その上のお墓は、仏様がいらっしゃらないうちは建てないほうがいいし、そのときに考えればいいと思います。 お父さんなりが亡くなって、残された人たちが、故人のために何とかお墓を建てて上げたいなと戸惑いながら苦労しながらお墓づくりに取り組んでいく。それもまた供養のうちでしょう。ぼくたちはそのささやかなお手伝いをさせていただいているのだといえるかも知れないですね。 私はお墓体験工場を一人でも多くの方に見ていただきたいと願っていますが、こちらにお見えになったからといって、矢田石材店でお墓を建てなければならないということは一切ありません。こちらから営業活動をすることは決してありません。 お墓を建てることなく一生を終える方も大勢いらっしゃいます。また、建てる立場になった方もお墓を建てるのは一生に一度のことで、お墓を2回以上お建てになる方はまずいらっしゃいません。 そんな一生に一度の大切なお墓づくりですから、ぜひとも間違いのないお墓を建てていただきたい。ぼくら矢田石材店は、そう心から願っております。 ―本日は貴重なお話、そしてお墓体験をさせていただき、本当にありがとうございました。 ※ 取材日時 2008年12月12日 ※ 取材制作:フォト・ジャーナリスト タクミ(カスタマワイズ) |